AGC 真空ガラスFINEO 開発者インタビュー
2024.12.09
AGC㈱は、このほどリノベーション向けガラス交換製品として、真空断熱ガラス「FINEO(フィネオ)」と「FINEO49」の試験販売を開始した(既報11月25日付1面)。
真空ガラスは、2枚のガラス間を真空状態に保ち、伝導や滞留による熱異動を抑えることで断熱効果を得ることができる。
「FINEO」は、放射による熱異動を抑制するLow‐Eガラスと熱伝導の小さい高断熱ピラー(真空層を保持する部材)を採用し20㍉間隔で設置したことで、熱貫流率(Ug値)0・87[W/(㎡・K)]を実現。また、一般的な真空ガラスに設置される真空排気ポートをなくすことで、すっきりとしたデザインとなった。
一方、「FINEO49」は熱処理したLow‐Eガラスを採用し、高断熱ピラーの間隔を28㍉に広げることで、熱貫流率(Ug値)は0・49[W/(㎡・K)]を実現し、環境省が推し進める先進的窓リノベ事業2024のガラス交換の性能要件(Aグレード/金属製サッシの場合のガラス性能要件[0・54W/㎡・K])を上回る性能を保持している。
「FINEO」および「FINEO49」の開発背景や特長について、AGC㈱建築ガラスアジアカンパニー日本事業本部新市場開拓部技術部の斉藤晃部長にQ&A方式で回答して頂いた。
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Q1 「FINEO」および「FINEO49」の開発背景は?
A1 先進的窓リノベ事業で設定されているガラス交換の性能条件を満たすガラスが日本にはありませんでした。そのため、窓リノベ事業の補助金は内窓が主体になっています。ガラスメーカーとして、ガラス交換で対象となる製品をターゲットに製品開発を進め、今回の発表に至りました。
Q2 「FINEO」、「FINEO49」の製品特長は?
A2 真空排気ポートが無いことが特長です。「FINEO」はマザーガラスに高断熱ピラーとエッジシールをセットし、その上からもう一枚のマザーガラスをセットしてマザーサイズで真空引きし、後切断する多面取りの製法であるため、排気ポートが不要になりました。しかし、不透明タイプは多面取り・後切断ができないため、フラットな排気ポートが付いています。「FINEO49」の特長は、Ug値0・49の部分です。0・5を切ることにこだわりました。そのため、「FINEO」のLow‐Eガラスがピュアクリアであることに対し、「FINEO49」では、製造過程で最も良い性能値を出すことができるアクアグリーンを採用しています。また、高断熱ピラーの間隔を28㍉に広げる(「FINEO」の高断熱ピラー間隔は20㍉)ため、熱処理ガラスを採用しております。そのため、多面取り・後切断ができないので排気ポートが存在します。また、アクアグリーンは日射吸収率が高いため、「FINEO49」は、サイズ制限を設けております。
Q3 「FINEO」と類似した真空ガラスに、パナソニック社が扱う「Glavenir(グラベニール)」があるが、両者の違いは?
A3 真空ガラスの製造方法は大きく変わらないと捉えております。AGCの「FINEO」はリノベーション向けガラス交換製品として試験販売しておりますが、「Glavenir」は、主に産業用、樹脂窓向けと聞いております。「FINEO」は単板ガラスのガラス交換需要として流通の皆様に取り扱っていただきたいと考えており、現在、先進的窓リノベ事業のリフォーム対象製品登録を進めています。近々に型番登録製品として公表されると思います。
Q4 今回販売エリアを限定して先行販売を行い、本格販売は2026年からと期間が空いている。その意図は?
A4 販売エリアの限定は、生産拠点との兼ね合いによるものです。真空断熱ガラスは、AGCとして初めて扱う製品です。各種評価は行っておりますが、実環境では予期せぬ事象の発生が考えられなくもないため、検証期間を設け、26年からの本格販売としています。検証状況に応じて、販売エリアの拡大や、発売時期の前倒しも考えております。
Q5 海外での販売予定は?
A5 海外販売は考えていません。リノベーションの一品一葉は加工等の条件を考えると難しいと思います。
Q6 「FINEO」および「FINEO49」の販売価格と販売目標額は?
A6 販売目標は開示しておりません。販売価格は、既存の真空ガラスよりも高性能であることを踏まえた価格設定となっております。
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斉藤部長の話には、透明性やUg値0・5を切ることへのこだわりが感じられた。先進的窓リノベ事業にガラス交換の補助金が設定されているにも関わらず、現状ではその性能要件を満たしたガラスが国内に存在しないことにも、ガラスメーカーとして思う所があったのではないだろうか。
今回、金属製サッシに取り受けてもAグレードの性能条件を満たす真空断熱ガラスが開発されたことにより、国内の既築住宅の断熱化が一層進むことを期待したい。