新光硝子工業 関谷新社長に聞く 売上より利益を重視
2023.09.11
曲げガラス、合わせガラスの新光硝子工業㈱(本社=富山県砺波市)は本年4月1日より関谷智宏氏が社長に就任し、新たな体制となった。先日、同社本社に関谷氏を訪ね、社長就任の抱負などを聞いた。
――社長就任はいつ告げられましたか?
関谷 今年の3月半ばです。突然社長になって欲しいと親会社のイチネンより告げられました。最初はお断りしました。自分は入社してからずっと技術畑で働いてきました。品質の方を担当していましたので、現場には足を運んでいました。経営面を見て欲しいと言われてもどうやってよいのかわからなかったからです(社長就任前は取締役工場長を担当)。今の状態で、自分が代表にならないと、一緒にやってきた仲間が大変困るので、受けざるを得ないと考えました。辞令は4月1日付けです。
――現在のご自身の考えは?
関谷 前から課題となっていたことですが、新光硝子の主力は曲げガラスです。曲げガラスの需要は昔と比べるとおちついてきており、今以上に伸ばすのは難しい状況です。かと言ってなくなるわけではありません。一方、安全ガラスについては伸びる余地は大きいです。子会社である新生ガラスで強化ガラスの生産を行っていますが、富山市内にあるので、工場のスペースが大きくないです。今は主に産業用を生産していますが、能力が一杯の状況です。仕事はたくさんあるのですが、できない状況にあります。建築用ガラスの需要があるのに、取れない状況です。新光硝子の工場に新生ガラスの設備をもってくるという案もあったのですが、そうすると、今度は社員がここまで通うのが大変です。
――新生ガラスの移転ですか?
関谷 新光と新生の中間ぐらいのところで土地がないか検討しているところです。広い場所で効率よく生産できる。社員も通勤できます。人事交流もうまくいく。カッティング機能も新しい場所に移動できれば、新光・新生の両方とも効率よく生産が可能となります。そういうことをやりたいと思っていますが、資金が必要です。親会社に見通しを立てて、相談することになります。
――担当役員は?
関谷 今は親会社より一人応援で来てもらっています。財務関係などはしっかりやってもらっています。
――新規採用については。
関谷 今は、賃金を上げないと人は入ってきません。まずはそこからスタートしたいです。一般社員に対しても今年はベースアップしました。管理職は上げず、若い層の人たちのベースアップにまわしました。新卒者だけあげる訳にはいきませんので。今、高卒という人はほとんどみあたりません。卒業生の8~9割は進学希望で、就職希望者はせいぜい1~2割程度。富山県全体で約7000人の高校卒業生がいますが、1000人ぐらいの就職希望者を富山県全体の企業で取り合いになりますから、大卒並みの給与を提示しても人気が薄いガラス業界には来てくれません。
新光硝子は場所的になかなか人が集まりにくい状況ですが、新生ガラスのほうは、立地条件が良いので人は集まります。今は高卒者を狙うより、短大卒や専門学校卒に注目しています。
――中途採用は?
関谷 こちらも来ないです。50歳を超えると来てくれますが……派遣社員が対象となります。
――目標は?
関谷 売上よりも利益重視です。今期は利益1~2億円を目指します。そのため、原価を徹底して調べています。それを元に値上げ交渉をしています。産業用は概ね値上げを認めてもらっています。その他のところも進めています。物価も上がり人件費も上がっています。そうすると製品代に上乗せしていかなければなりません。製品原価は逐一、目に見えるような体制にしています。
――選別受注を進めているようですね。
関谷 値上げも認めてもらっている訳ですから、品質に関しては「絶対に妥協するな」と指示しています。品質管理は徹底的に行っています。
――最後に新商品の開発状況は?
自社ブランドである「shinG(シング)」を立ち上げました。高度なガラス加工技術と高いデザイン性を融合することによって板ガラスをベースにしたインテリア商品による新たなライフスタイルを提案していきます。6月には東京ビッグサイトで開催された「インテリアライフスタイル2023」に出展し、多くの来場者の注目を集めました。また、インスタグラムも自社ブランド立ち上げに伴い開設しましたので、ぜひご覧ください。
――ありがとうございました。今後のご活躍を期待しています。
関谷智弘氏の経歴
昭和36年11月富山県高岡市伏木出身。61歳高岡第一高等学校を卒業後、昭和55年に新光硝子工業に入社。主に製造畑を担当。平成24年に取締役工場長に就任。平成30年に「黄綬褒章」を受章。趣味はゴルフ、釣り、バイク。好きな言葉は「あきらめずにやる」