物流効率化の新制度①
2025.02.10

政府は1月28日に閣議を開き、トラック運転手の労働規制で物流の停滞が懸念される問題に対応する改正物流効率化法を4月1日に一部施行すると決めた。その際、新な制度として、企業規模を問わず全ての荷主に一度に多くの荷物を運ぶトラックの積載効率の向上や、ドライバーの長時間労働を抑制する「荷待ち・荷役時間の短縮」の努力義務を課すことで円滑な物流を実現しようという。
2024年4月から建築業界や物流業界をはじめとするこれまで総労働時間制限が猶予されていた業界も総労働時間の規制が行われるようになったが、特に物流業界ではトラック運転手の労働規制が強化され、一作年までのように荷物を運べなくなった。労働力の確保と効率化を進めなければ運送が困難になる見込みで、改正法の着実な実行が求められている。
すでに、年明けにも荷待ち・荷役時間が改善されていない荷主に国交省から注意が発せられている。
積載率はトラックなどが運べる荷物量に対して実際に積んだ荷物の割合。この数年の平均は40%に満たず、半分も積載されていない状態でトラックが運行していることになる。政府はこれを「無駄がまだまだ多い」とみており、これまでより1割程度改善した44%に引き上げたい考えだ。各事業者が取り組むべき具体策は今後、指針として示すとしている。
発送や納品のスケジュールを正確に調整したり、複数の荷主の荷物を一緒に運んだりするなどを想定していると思われる。
倉庫や配送拠点、配送先で順番を待つ荷待ちと、荷物を積み降ろすなどの作業である荷役にかかる時間は現在、トラック1運行当たり平均3時間超であるという。これを到着予約システムの普及や作業の機械化などで2時間以内への削減を目指すとしている。
改正法のうち、より強い精度についてはこれらの準備には時間がかかるため1年後の2026年4月施行を予定している。具体的には扱う荷物量が多く、物流網への影響が大きな荷主や運送業者を「特定事業者」に指定し、効率化計画の策定を義務付けるという。
特定事業者でない場合であっても、「全ての荷主」を対象にした制度であり、全ての荷主の協力が努力義務とされている。
特に荷主の負担が増加するのは、まず運賃である。改正法により物流業者が「適正」な運賃を請求できる仕組みが整備されることから、これまで曖昧だった料金項目が明確化される。
具体的には
・運賃の増加
待機時間のコスト(例・荷物の積み下ろし時に発生するドライバーの無駄な待機)
荷役作業費(積み込みや積み降ろし作業の手数料)
燃料費(燃料価格変動を反映したサーチャージ)
特に、「待機時間の適正化」を進めない荷主は待機量を含んだ高い運賃を請求される可能性が高い。
小口配送の割高コスト
背景として、小口配送は積載率が低く、トラックドライバーの労働時間も無駄が多いため、割高な運賃が課せられる可能性がある。
影響として、配送単価の値上がり、少量や高頻度の注文を行う取引先に配送料を添加することが困難な場合荷主がそのコストを負担する羽目になる可能性がある。
・サプライチェーン再構築コスト
改正法により、荷主側も物流効率化を進める責任が求められる。これに対する投資が必要になる。
影響としては、物流拠点の見直し(配送センターの統廃合や新設)、自社で保有する在庫量や配送タイミングの最適化を達成するための調整コスト。共同配送への参加費用やシステム導入費用。
・IT・デジタル化関連の投資
国が物流効率化のためにデジタル技術の活用を推奨しているため荷主側も新たなITシステムを導入する必要が出る場合がある。配送計画のシステム導入やトラック運行システム、荷主追跡システムの導入。荷主と物流業者の間の情報共有を効率化するプラットフォームの使用料などが挙げられる。
これだけでなく、これに伴う人件費なども予想される。
今後の懸念
物流業者の値上げが進む中、取引先への価格添加が難しい場合、荷主の利益率が低下する。
対応が遅れる企業は行政指導や社会的信用低下のリスクを伴う。
(この項続く)