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日本板硝子 細沼社長・平部長インタビュー

2023.12.11

細沼社長(左)と平部長

 日本板硝子㈱は本年4月に8年ぶりに社長が交代、新しく細沼宗浩氏が就任した。今回は、11月に同社本社を訪問し、細沼社長に同社の現況と今後についてお話を伺った。また、国内建築用ガラスの動向については、同社執行役員建築ガラス事業部門アジア事業部日本統括部長・平健二郎氏にも同席していただきお話を伺った。インタビューの中で細沼社長は「我々はガラスメーカーです。これからもガラスの技術、力、ソリューションを信じて前に進んでいく」と力強く語っていた(この取材は時報社と同時に行ったものです)。

 ――まず、2024年3月期第2四半期の決算について。前年同期比で増収増益を継続され、上期業績予想を達成されました。なぜ好結果に繋がったのか、その理由をお聞かせください。

 細沼 ここ数年苦しんできた自動車用ガラス事業がかなり改善してきました。全世界的に販売数量の回復に加え、価格改定を自動車メーカーと交渉してきて、良くなってきました。日本の自動車用ガラス事業でいくと舞鶴の5号窯の定修が漸く終了して、これで、コストベースがかなり良くなりました。これらの複合的要因で自動車用ガラス事業が大変良くなりました。

 一方、建築用ガラス事業でいくと太陽電池パネル用のガラスの需要は、景気の動向に左右されることなく、堅調に推移しました。一般的な建築用に関しては、欧州は経済活動の減速に伴い販売数量は減少しましたが、日本では、需給バランスの改善に伴い販売価格及び販売数量が改善されました。高機能ガラス事業については、伸びてはいませんが、利益はしっかり稼いでいます。

 ――現状はわかりました。今後についてですが、欧州の建築用は良くなるのでしょうか。

 細沼 今期後半は、まだ良くない状況が続くと思われます。需要も低調でそれにともなって価格も落ちてきています。そういう意味で今期後半は楽観視できないとみています。来期は持ち直して欲しいと思いますが、あまり楽観視をせず、ここはコスト削減も含めてきっちりマネジメントしていかなければならないと思っています。

 下期については、欧州の建築用ガラスについては懸念があるものの、自動車用や日本の建築用については、今後も堅調に推移していくものとみており、当初の下期予想を変えずに進めています。

 ――その、国内建築用ガラス事業ですが、読者の方から設備投資はどうなっているのかという問い合わせをいただいています。

 細沼 来期から始まる次期中期計画の策定を進めているところで、優先順位などもありますので、詳しいお話はできませんが、スペーシアやLow―Eガラスについては、前向きに検討しているところです。

  国内建築用ガラス事業について、上期については前年同期比で増収増益でした。好調に推移しています。コスト的には原油価格の高騰や物流費の問題はありますが、ご承知の通り、昨年、10月に行いました価格改定で昨年度の下期から徐々に浸透してききました。ほぼ上期中には想定していたところまで、できたのかなと考えています。その効果もありまして、増収増益という形にきています。

 住宅用については、建築資材の高騰もあって、少しハウスメーカーを中心にやや前年より下降ぎみということもありますが、非居住については、比較的堅調に推移しています。補助金の支えもあって、開口部のリフォーム需要については、上期は盛り上がったと思います。スペーシアやLow―E複層といったところは好調に販売できたと思っています。売上金額ベースでは、対前年比で2倍の販売がありました。

 新築住宅着工減の影響は、新築住宅向けについてはLow―E複層が主流ですので、そちらで多少の販売減の影響があったと思っています。

 ――非居住のほうは。

 平 首都圏を中心に堅調といったところです。その中で、これまで単板仕様だったところで、機能ガラスの浸透が進んできたのかなと思います。その分好調にきています。

 ――供給体制については?

 平 上期はパレットの課題がありました。一部製品としてはスペーシア等の納期遅れがありました。パレットについては、対策が少し遅れたのですが、パレットの購入や市場からの回収等、ひのまる会の皆様にも多大なご協力をいただきまして、

現在は概ね解消することができました。来年に向けてはパレットの管理体制や生産体制の更なる強化に取り組んで行きたいと思います。

 パレットについては、今後も補充しなければならない状況は課題になっているのですが、供給体制を維持するためにはやっていかなければならないと思っています。

 ――各メーカーでのパレットの共通化は?

 平 以前、そういう話はありましたが、今のところは進んでいません。パレットが足りないという問題は3メーカー共通した問題で、板硝子協会でもご存知のとおり、パレットの回収を進めています。

 ――パレットを製作するのに大きな経費がかかるということをもっとアピールしても良いと思いますが……

 平 ありがとうございます。ひのまる会の皆様にはご迷惑をおかけしないよう、そういったご理解をいただいて進めていきたいと思っています。

 ――下期の国内建築用については?

 平 冬場は北日本を中心に落ち着く時期なので、供給体制は十分対応できると思います。非居住物件についてもフォローしています。

 ――欧州については?

 細沼 先ほどのお話の通り、下期も難しいと思います。インフレも進んでいます。ドイツに関しても、ロシアとの関係もあり、もうしばらくかかる感じで、楽観視できません。ただ、徐々に良くなるのではないかと期待しています。

 ――今の円安傾向は御社にとってプラスですかマイナスですか。

 細沼 現地生産が基本ですから、プラスでもマイナスでもないです。

 ――次期中期計画については

 細沼 策定中でここでははっきりした内容は申し上げられませんが、「我々はガラスメーカーである。これからも、ガラスの技術、力、ソリューションを信じて進んでいく」というのが、次の中計では明確におりこんでいます。

 ――ガラスを扱うものにとっては心強いお言葉です。ぜひがんばっていただきたいと思います。ありがとうございました。

 

 ☆細沼社長のプロフィール

 ▽出身地 埼玉県志木市

 ▽生年月日 1972年11月27日生まれ。51歳

 ▽学暦 1998年=東京大学大学院工学研究科・都市工学専攻(修士)

 ▽略歴

 ・1998年=4月㈱日建設計入社

 ・2005年=7月㈱ボストン・コンサルティング・グループ入社

 ・2010年=住友スリーエム㈱(現スリーエムジャパン)入社

 ・2018年=日本板硝子入社

 その後、経営企画統括部統括部長を経て2021年1月に執行役常務建築ガラス事業部門長。2022年4月に代表執行役副社長。

 ・2023年4月=取締役代表執行役社長兼CEOに就任

 ▽座右の銘=動機善なりや、私心なかりしか。

 ▽信条=いつでも前向きに、ポジティブに。

 ▽趣味=週末の温泉旅行。F1鑑賞

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