東京都 住まいの室温実態調査を公表 持ち家世帯の半数が「暑さ・寒さストレス」
2025.09.22


東京都は、戸建ておよび分譲集合住宅に住む20〜80代の男女1400名を対象に、住まいの室温に関する実態調査を実施した。その結果、持ち家に住む人の約半数が、暑さや寒さによる室温ストレスを経験していることが明らかになった。調査結果を踏まえ、既存住宅の省エネ改修を促進する目的で、「家族の健康を守る!住まいの温活セミナー」を東京都内で複数回開催する予定。
東京都では既存住宅の省エネ改修促進のため、高断熱窓・ドア等の改修に対して助成事業を展開しており、本調査はその一環として今年7月にインターネットで実施した。
調査結果の詳細は、次の通り。
①室温ストレスの概況
室温ストレスの経験について尋ねたところ約 2人に1人(50・6%)が「室内が暑すぎて/寒すぎて耐えられないと思った経験がある」と回答。一方で、約3人に1人は光熱費高騰を意識してエアコンの使用を控えていることが判明。
また、『室温ストレスで感じている体調や健康に関する影響』について回答の多い順に「睡眠の質の低下(20・0%)」、「体がだるく感じた(16・3%)」、「寝つきが悪くなった(15・4%)」 となり、室温ストレスから睡眠の質への影響を感じている。年代別では、60代以上の約半数(52・9%)が「睡眠の質の低下」、50代は約6割(55・7%)が「体がだるく感じた」と回答しており、特に中高年~シニア層は室温ストレスから健康への影響を感じていることが明らかになった。
②子育て層の室温ストレス
小学生以下の子どもがいる親に尋ねたところ、約4割(42・5%)が夏の子どもにまつわる室温ストレスを感じており、そのうち約7割(67・9%)がお金を支払ってでも解決したいと回答。特に約3人に1人(31・5%)は、「子どもがエアコンの効いた部屋から出たがらないこと」をストレスに感じており、お金を支払ってでも解決したいとする回答の金額平均は平均2711円/月。
また、20~40代の既婚者に家族やパートナーと生活環境に対する価値観の違いに よるストレスを尋ねたところ「片付けや掃除の頻度・基準」が最も多い。次いで、「室内の温度に対する感じ方」「電気代などの光熱費に対する節約意識」という結果に。「室内の温度に対する感じ方が異なること」が別居の検討や喧嘩になるほどストレスに感じるという人も約1割(12・9%)見られた。
③高齢の親を持つ層が悩む「エアコンをつけない親」問題
高齢の親と同居する人に尋ねたところ、約2割(21・3%)が「高齢の家族が暑くてもエアコンをつけない」ことにストレス・悩みを感じている。そのうち約6割(58・8%)はお金を支払ってでも解決したいと考えており、回答の金額平均は月額平均4116円という結果になった。
④断熱リフォーム実施者が実際に感じた効果
断熱リフォーム実施者に断熱リフォーム実施後の快適性について聞いたところ「室温が一定に保 たれるため、快適に過ごせるようになった」と回答した人が約8割(75・5%)。また光熱費に関し て月額あたり平均3479・6円減少していることがわかった。
また、断熱リフォーム実施によって気にならなくなったこと、解消されたことを聞いたところ、 「外の騒音(車・工事・通行人など)が気にならなくなった」(30・0%)、「結露やカビの発生が減
り、掃除や健康面の不安が軽減された」(24・0%)など、室温以外の面でもメリットを感じていることがわかった。
◎住まいの専門家に聞く、室温ストレスが起こる原因と解決法
調査結果について、(一社)法人ロングライフ・ラボの清水雅彦代表理事は、次のようにコメントしている。
「近年の気候変動により、住宅内の暑さや寒さが生活者に与える負担は深刻化している。調査では、 多くの人が住環境の温度によってストレスを感じていることが分かった。その大きな原因は、住宅の断熱性能の不足で、保温性や保冷性が十分でないということ。既存住宅の性能を詳しく調べるのは難しいが、窓の種類からある程度推測できる。総務省の『2023年住宅・土地統計調査』によると、『すべての窓が1枚ガラス』の住宅は63・9%(3558万戸)、『一部の窓が二重以上または複層ガラス』の住宅は15・1%(842万戸)。これらを合わせると、約79・0%(4400万戸)の住宅が断熱不足と考えられる。なぜ断熱不足の家が多いのか?大きな理由は、耐震性能と違って断熱性能が法律で定められていなかったから(2025年4月から運用開始)。法規制がなかったため設計時の優先順位が下がり、断熱不足の住宅が多く建てられてきた。さらに、省エネ住宅に関する情報が生活者に届きにくいことも影響している。そこで、室温ストレスを軽減し、冷暖房費を抑えるには、既存住宅の断熱リフォームが有効となる。調査では、実施者の約8割が快適さを実感し、光熱費も月平均3479円節約できたという結果が出ている。断熱リフォームは家全体の改修が理想だが、熱の出入りの約47%が窓やドアなどの開口部からであり(ロングライフ・ラボ調べ)費用対効果も高いため、予算に限りがある場合は窓の断熱をおすすめする」
東京都では、こうした室温ストレスの課題解決を促すため、高断熱窓やドアへの改修に対する助成事業を展開している。さらに、この調査結果を踏まえ、既存住宅の省エネ改修を促進する目的で、「家族の健康を守る!住まいの温活セミナー」を東京都内で複数回開催する。セミナーでは、住宅に関する専門家として、省エネ設計に精通した清水氏と冷え治療・温め治療の専門医のイシハラクリニック石原新菜副院長が登壇、家族が健康に過ごすための住まいの温活について講演を行う。会場では実際に断熱窓の展示を用意する他、専門相談員への個別 相談が行えるコーナーも用意する。
参加費は無料で、申込みはイベント特設ページ(https://www.tokyo-co2down.jp/seminar/sumai-no-onkatsu)から。各回とも定員は50名で、定員に達し次第受付を終了する。
◎家族の健康を守る!住まいの温活セミナー
○第1回~冷え・暑さ・アレルギー対策に。子育て家庭の住まいの整え方~
9月27日(土)午前10時30分~午後0時30分、東京都新宿区西新宿1‐14‐11Daiwa西新宿ビル4階・TKP新宿カンファレンスセンターホール4D
○第2回~健康寿命を延ばす住まいの工夫~
10月19日(日)午前10時30分~午後0時30分、東京都八王子市明神町3‐19‐2・東京たま未来メッセ3階第1会議室
○第3回~健康寿命を延ばす住まいの工夫~
11月13日(木)午前10時30分~午後0時30分、東京都新宿区西新宿8‐17‐3住友不動産新宿グランドタワー5階・ベルサール新宿グランドRoomE
○第4回~健康寿命を延ばす住まいの工夫~
11月20日(木)午前10時30分~午後0時30分、東京都世田谷区北沢2‐8‐18・北沢タウンホール3階ミーティングルーム
○第5回~冷え・暑さ・アレルギー対策に。子育て家庭の住まいの整え方~
12月13日(土)午前10時30分~午後0時30分、東京都新宿区西新宿2‐4‐1新宿NS ビル3階・NS会議室3‐J