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板硝子協会 リサイクルビジョン発表 ポストカレットの積極活用

2026.01.19

左から島村副会長、森会長、清家教授、川瀬副会長
 (一社)板硝子協会(森重樹会長)は12月12日に記者会見を開き、板硝子産業のカーボンニュートラル実現に向けたロードマップとなる「ビジョン2025」、および「板硝子リサイクルビジョン~ファーストビジョン2025~」を発表した。これには、従来品質管理の観点から再利用が困難とされ、産業廃棄物として処理されてきた建築解体現場や廃車由来のポストカレットの積極活用を宣言。定量的な目標として2030年度に11万トン、2050年度に30万トンのリサイクルを目指す意欲的な目標を掲げた。
 会見の冒頭、森会長は「カーボンニュートラル達成に向けた技術革新や体制変革は業界の責務」と強調した。
今回発表された「ビジョン2025」は、既出の「ビジョン2022」をアップデートしたもので、2030年度にCO²排出量を2013年度比で38%(年間72.6万トン)削減する定量目標を明確化した。
 環境技術委員会の水谷亮一委員長は、同協会の会員社である板ガラスメーカー各社がそれぞれ取り組む板ガラス製造時の燃料転換に向けた燃焼技術の開発と導入について「燃焼技術開発完了は2035年頃、非化石エネルギーによる燃焼技術の導入完了は2050年頃を目指すが、サプライチェーンの構築など、一業界では解決できない課題もある」と指摘。その上で、会員各社と板硝子協会一体となって、低炭素ガラスの定義の制定から普及拡大、またパレットの協働回収などを通じたサーキュラーエコノミーへの転換などに取り組み業界を挙げた取り組みを紹介した。
 また、サステナビリティ特別委員会ホールライフカーボン部会の久田隆司部会長により、製品の製造段階のCO²排出量を算定し、窓の断熱性能による削減貢献量と組み合わせて見える化できるウェブ算定ツールの運用開始も報告された。
 今回の発表で大きな関心を集めているのが「板硝子リサイクルビジョン」の策定だ。これまで、製造工場内から排出される端材など、最終製品になる前にリサイクルされるガラスクズを用いたプレカレットのリサイクルは進んでいたものの、最終製品として建築物や自動車に利用された後、建築物の解体現場や自動車の廃車処理時に出るガラスクズをリサイクルするポストカレットについては、異物が付着・混入したままで窯へ投入すると設備へのダメージや製品品質への影響が非常に大きく、受け入れ自体が難しかった。
板硝子協会のサステナビリティ委員会で主査を努める東京大学の清家剛教授も「ガラス自体はリサイクル可能な素材ではある一方、ガラスの大きな窯の中に小石が一つ混入すると製品として使えないガラスが製造され続けてしまい、数億円単位の損失を生じかねない。だからこそ解体現場からの回収も盛り込んだ宣言は画期的であり、歴史的な転換点」と評価した。
 板ガラス製造時に排出されるCO²の内、約13%はソーダ灰などの炭酸塩原料の熱分解によって発生する。ここでカレット利用率を上げることは、溶解エネルギーの削減だけでなく、この原料に由来するCO²発生そのものを抑制する効果があり、1トンのカレット利用で約0.6トンのCO²排出削減につながり、カーボンニュートラル達成に向けて大きな効果を持つ。板ガラスリサイクル・再資源化部会の伊東弘之部会長代行(板硝子協会特任理事)は、具体的な数値目標として、ポストカレットの受け入れ量を2030年度に11万トン(建築用約10万2000トン、自動車用約8000トン)、2050年度には30万トンまで引き上げる計画を発表した。実証実験を通じて回収し再生品化する計画はあるものの、現状からは極めて野心的な目標と言える。
 実現にむけた最大の障壁はやはり異物の混入で、特にアルミやニッケルは超忌避物質とされ、微量でも混入すれば数億円規模の損害に直結する。さらに、近年の建築物は複層ガラスや合わせガラスが主流となっており、ガラス単体への分離や解体も容易ではない。伊東部会長代行は「アルミスペーサーや中間膜などの有機物をいかに効率よく取り除くかが喫緊の課題」とし、解体現場での厳格な分別や、中間処理業者との連携、将来的には選別技術の革新が必要不可欠との認識を示した。
 建築用以外では、自動車リサイクル法のインセンティブ制度(2026年4月適用開始予定)を活用し、解体事業者等とのコンソーシアム創設を目指す。太陽光パネルガラスについては、成分組成の違いから既存の窯への投入は困難としつつも、化学メーカー等と連携し技術開発を進める方針だ。
 質疑応答で伊東部会長代行は「コストや物流、選別技術など課題は山積している」と率直に語った上で、「ガラスは本来リサイクル可能な素材。業界の総力を挙げて循環の輪をつなぎ直す」と決意を述べた。
 2050年のカーボンニュートラル実現に向け、板ガラス業界は大きな挑戦の第一歩を踏み出した。

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