叙勲受章インタビュー・岡本春雄氏
2023.07.03
令和5年「春の叙勲」で福岡県板硝子商工協同組合理事の岡本春雄氏(福岡県北九州市、岡本硝子㈱代表取締役社長)が瑞光単光章を受章した。
厚生労働省推薦分(技能検定功労)での受章は、ガラス施工の技能検定委員を23年間務めた功績が評価された。
岡本氏に受章の喜びの声を伺った(以下、敬称略)。
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―瑞宝単光章のご受章、おめでとうございます。早速ですが、ご受章の経緯をお尋ねします―
岡本 ありがとうございます。県の能力開発機構から推薦していただきました。県板硝子商工協同組合の推薦で、2000年に技能検定委員に選出されましたので、今年で23年になります。叔父が岡本硝子の社長、父が専務をしていたこともあって、中学時代からガラスの仕事を手伝っていました。昭和44年に戸畑工業高校建築科を卒業し、叔父の会社に入社して54年間、現在に至っています。長く続けてきたことも評価されたのかなと思っています。
―今年の業界は補助金の話で持ち切りですが、お仕事の方はいかがでしょうか?―
岡本 最近は、大手住宅メーカーが手がける家が増えているので、そちらの仕事は中々ありません。しかし補助金も含めて、一般消費者向けの仕事も多くなっています。また、ブロックなどの仕事も受けるようになりました。建築科を出ているので、ガラス以外にも知識がある事と、同級生の繋がりで仕事が入ってくることもあります。
―業界に入ってくる若手の不足が問題になっています―
岡本 若手を育てたいと言いう思いがあります。それも検定事業に関わるひとつです。昨年、福岡は検定を14人が受検して、10人合格しました。毎年、コンスタントに10人前後の合格者を出しています。団塊の世代が仕事を辞めて、新しい人に切り替わっています。若い人に資格を取ってもらうと、(業界を)辞めにくくなるし、資格手当も付くので、長い目で見れば人を育てることが一番意味のある事だと考えています。
―福岡の検定は毎年多くの人が受検しています。毎年多くの受験生をどのようにして集めていらっしゃるのですか?―
岡本 「組合がある」ということが大きいと思います。ゼネコンなどでは資格が必要になるので、組合員さんの社員は受検に来るのでしょう。また、資格を取ると社員が変わると言われています。自信を持って仕事に取り組む、地位が向上される、こうしたことが、やりがいに繋がるのでしょう。それに、人が集まらないと検定は続けられません。受検者が5人くらいになって、2年に1回の試験になると、受けたいと思った年に受検できなくなります。そうすると、受検しようという気持ちが無くなってしまい、他の業界に転職してしまうことにも繋がります。
―越境の受験生はいらっしゃいましたか?―
岡本 一時期は奄美や、長﨑からの受験生もいました。しかし、能力開発協会としては、県内の若い人が育たないから、出来るだけ県内で検定をとの意向があるようです。ただし、検定を行うためには指導者がいないと難しい。一度途切れてしまうと、指導者を育てる所からスタートしなければいけません。全硝連でも言われていますが、検定員のレベルの向上を続けて行かなければ、検定事業が成り立たなくなります。また、昔と違って「仕事を見て覚えろ」が通じにくい時代です。人を育てる気持ちを持たなければなりません。
―人を育てる上で、気を付けていらっしゃることはありますか?―
岡本 今でも現場に出るようにしています。現場で若い人に会うと向こうから声をかけてきてくれるので、悪い気はしません。教える以上は、生涯現役でいなければならないと思います。現場に出ることで、例えばフルハーネスはどうやって着けるか、あの付け方は緩くて危ないからちゃんと着ける、といった実地に即した指導もできます。安全第一の心構えや、おはようございます、失礼しますといった節目のあいさつ、こういったことまで教えていく事で、業界のレベルも上がっています。こうして教わったことを、次の世代に伝えてもらえれば、それに勝ることはありません。
―次の世代が順調に育っているように見えます。そうなると、いよいよグランプリも見えてきます―
岡本 以前神戸で開催されたグランプリを見学しましたが、あれは若くないと難しいです。来年、北九州でグランプリが開催されますから、何人か出てもらう準備をしています。
―貴重なお話をありがとうございました。改めて、ご受賞おめでとうございました―
◯岡本春雄氏
1951年(昭和26年)1月17日生まれの72歳。高校卒業後、叔父の経営する岡本硝子㈱に入社、その後会社を引き継ぎ、社長に就任。福岡県板硝子商工協同組合では、検定補佐員を10年務めた後、検定委員長、副理事長などを歴任。北九州市組合の理事長も2期4年務めた。趣味は仕事。