ガラスの供給元を拡大し安定供給に努める
2022.10.31
日本板硝子㈱(東京都港区、森重樹社長)は2022年7月15日、建築用板ガラス製品について10月1日出荷分から価格改定を実施すると発表した。同社は、2021年7月29日にも板ガラス・鏡製品などの価格改定を発表しており、2年連続での価格改定を実施することとなった。
昨年の発表後には納期の問題なども発生したが、本年の状況はどのようになっているのか?
同社アジア事業部日本統括部営業部長の大野義之氏に、現在の進捗状況などについて、お話を伺った(2面に関連記事掲載)。
―― 10月に入りましたが、価格改定の進捗状況はいかがでしょうか?
大野 去年に続いての価格改定になりますので、昨年に増して早い段階で、流通の皆様にご理解頂くようなアクションを行なっております。具体的には、流通の皆様に、ご訪問させていただき、値上げ幅や品種、対応策のほか適用時期である10月1日に向けてのご説明を進めてまいりました。おかげさまで、多くの皆様からご理解を頂いております。
―― 流通の中の一部では、サッシメーカーの値上げの時期に合わせる形にならないか、交渉を進めているとの話も聞こえてきています。
大野 ひのまる会のメンバーの方々をはじめ、流通の皆様それぞれのご事情があることは理解致しますが、我々としては、早期適用をご理解頂くように活動をしております。現時点では、改定時期についての議論をするには、時期尚早と考えております。
―― 納期についてはいかがでしょうか?昨年の様な混乱は起こっていないと聞いています。
大野 納期面に関しては、昨年は大変ご迷惑をおかけし、申し訳ありませんでした。この場をお借りして改めてお詫び申し上げます。我々は、主力のLow‐Eガラスを海外から調達しておりますが、昨年は、船便をはじめとしたサプライチェーンの混乱により、お客様のご希望される納期に十分に対応することができませんでした。今年は不測の事態を想定し、十分な素板を確保し、安定供給に努めております。首都圏など、一時的に受注が集中するケースがあるため、物件によっては納期の調整をお願いすることはあるかと思いますが、標準的な納期という意味では、流通の皆様のご期待に応えることができていると考えております。
―― 海外から持ってこられているということですが、ここに来て急激に為替も変動しております。いかがお考えでしょうか?
大野 為替における急激な変動は、当社にとって大きな負担となっております。ただし、極力負担を軽減すべく供給元の拡大にも努めております。
―― 今回の価格改定は、準備を整えた上で進められている印象を持ちました。改めて読者の皆さんにメッセージを頂ければと思います。
大野 市場の声を伺いますと、流通の皆様も価格の転嫁には、多大なご苦労をされているものと認識しております。しかし、業界のサスティナブルな活性化のためにも、是非ともガラスとしての価値の転嫁を進めていければと思っておりますし、我々もサポートをさせて頂きたいと思っております。
―― 流通の皆さんも含め、交渉の際の説明資料が少ない、といった声を耳にします。御社としてだけではなく、業界全体の統一見解や説明資料の作成にも、お力を貸していただければと思います。
大野 我々は、流通の皆様とはフェイスtoフェイスで会話をさせて頂いておりますが、その先のユーザー様とは直接お話が出来ないことも多くあります。その点を解決すべく、流通の皆様が説明をしやすいツールについて、考えていく必要があると考えております。
―― 是非とも、資料などの作成のご検討を、お願いしたく思います。
大野 最後に、流通の皆様にお願いがございます。先ほど納期のお話がございましたが、我々製造サイドが素板などを備蓄し、安定的な供給を図る準備を進める中で、ここ数年危惧していることは、ガラス搬送用パレットの不足といった問題です。実際にパレットが無く、生産ができない事例も発生しております。現在は、パレット回収の啓蒙活動も行われていますし、流通の皆様にもご協力いただいており、大変感謝しております。パレット問題は我々メーカーだけではなく、業界共通の問題でもあります。引き続き、パレットの回収促進にご支援とご協力を賜りますようお願い申し上げます。